なぜオーストラリアの美容師は、豊かな人生を送れるのか

【札幌から理美容業界を変える】

僕は、オーストラリア・ブリスベンで10年以上、美容師として現地のサロンに身を置いてきました。

その中で、強く感じたことがあります。

それは、日本とオーストラリアでは、美容師を取り巻く環境がまったく違うということです。

技術力の差ではありません。
努力の差でもありません。
むしろ、日本の美容師は世界的に見ても、かなり真面目で、勉強熱心で、技術へのこだわりも強いと思います。

それなのに、なぜ日本では美容師の労働環境がなかなか良くならないのか。

僕はその答えのひとつが、
「料金に対する考え方」
にあると感じています。


一生懸命だけでは、報われない時代になった

日本の美容業界では、長い間、朝から晩まで働き、営業後に練習し、休日も講習に行くことが美徳とされてきました。

もちろん、技術職である以上、努力は必要です。
僕自身も、35年以上この仕事を続けてきた中で、技術を磨くことの大切さは痛いほど分かっています。

ただ、問題はそこではありません。

どれだけ努力しても、
どれだけ勉強しても、
どれだけお客様の髪に真剣に向き合っても、

料金設定が低いままであれば、働く人の生活は豊かになりません。

「好きな仕事だから我慢する」
「修行だから仕方ない」
「美容師はそういうもの」

この考え方のままでは、若い世代がこの業界に夢を持てなくなってしまいます。


オーストラリアでは、美容師が普通に豊かに暮らしている

僕がブリスベンで見てきた美容師たちは、仕事をしながら、きちんと人生も楽しんでいました。

週40時間を基本に働き、練習やミーティングも労働時間の中で行われる。
物価が上がれば、それに合わせて料金も上がり、給与も見直される。
40代、50代になってもサロンに雇用されながら、家を持ち、車を持ち、家族との時間も大切にしている。

中には、BMWに乗っている美容師も普通にいました。

これは決して「海外だからすごい」という単純な話ではありません。

オーストラリアでは、技術者が生活できるだけの料金を、お客様からきちんと頂く文化がある。
そして、その料金の中から、スタッフの給与、教育、薬剤、設備、休日、将来への投資が成り立っている。

つまり、
美容師の豊かさは、料金設定と直結している
ということです。


ホワイトな美容業界を作る鍵は、客単価にある

美容室がホワイトな環境になるか、ブラックな環境になるか。

僕は、その大きな分かれ目は客単価だと考えています。

僕がコロナ禍の直前まで働いていたブリスベンのサロンでは、カットで1万円前後、カットとカラーで2万円前後という料金は、特別に高いものではありませんでした。

もちろん、そこには理由があります。

オーストラリアは労働基準が厳しく、最低賃金も高い。
スタッフを雇う以上、経営者はその給与をきちんと支払わなければなりません。

だからこそ、サロン側も料金を適正に設定する必要があります。

安く売るのではなく、価値に見合った料金を頂く。
そして、その料金を技術、薬剤、設備、人材、労働環境へ還元する。

この循環があるから、美容師が無理なく働き続けられるのです。


日本の美容師は、もっと正当に評価されていい

日本の美容師は、本当に勉強熱心です。

カット、カラー、パーマ、縮毛矯正、髪質改善、薬剤理論、デザイン、接客。
覚えることは山ほどあります。

それにもかかわらず、1990年代から2010年代にかけて、日本の美容室の料金は大きく上がってきませんでした。

技術は進化している。
薬剤も進化している。
お客様の求めるレベルも上がっている。

それなのに料金だけが止まったままでは、業界全体が苦しくなるのは当然です。

美容師が豊かになれない業界に、若い人が希望を持てるでしょうか。

僕は、持てないと思います。

だからこそ、これからの日本の美容業界には、
「安さ」ではなく「価値」で選ばれるサロン
がもっと必要になると考えています。


安売りは、お客様想いに見えて、未来を削っている

地域に根ざした個人店が、3,000円、4,000円でカットを提供する。
もちろん、それ自体を否定するつもりはありません。

長く通ってくださるお客様のために、できるだけ料金を抑えたい。
その気持ちも分かります。

ただ、業界全体で見たとき、安すぎる料金が当たり前になると、後輩たちが適正な料金を頂きにくくなります。

どれだけ技術を学んでも、
どれだけ薬剤知識を深めても、
どれだけ丁寧に仕事をしても、

「この地域ではこのくらいの料金が普通だから」と言われてしまう。

これでは、若い美容師が家庭を持ち、子供を育て、将来に希望を持って働くことが難しくなります。

お客様にとって安いことは、短期的にはメリットかもしれません。
しかし、その裏側で技術者が疲弊し、若い人材が業界を離れていくなら、それは長期的にはお客様にとっても損失です。


札幌でも、価値ある技術には価値ある料金を

東京では、すでにカット1万円以上の美容室も珍しくなくなってきました。

そして、札幌でもこれから確実に変化が起きると思います。

ただ髪を短くするだけなら、安いカットでもいいかもしれません。
でも、骨格、髪質、毛流れ、クセ、ダメージ、年齢による変化、これから数ヶ月先の扱いやすさまで考えて切るカットには、まったく別の価値があります。

カラーも同じです。
ただ染めるのではなく、頭皮への負担、髪のダメージ、残留物、数ヶ月後の色落ち、次回の施術まで考えて薬剤を選ぶなら、それは単なる作業ではありません。

僕は、そういう仕事に対して、正当な価値がつくべきだと思っています。


新たな業界への挑戦

当サロンは、札幌・円山にある小さなプライベートサロンです。

1日に多くのお客様を詰め込むのではなく、限られた人数のお客様と、きちんと向き合うためのサロンです。

僕はこれから、札幌で美容師という仕事の価値を、もう一度高めていきたいと思っています。

そのために、自分自身がまず、適正な料金を掲げます。

ただし、料金を上げるだけでは意味がありません。

その分、技術を磨き続ける。
新しい薬剤理論を学び続ける。
髪に良いものには投資を惜しまない。
お客様にとって本当に価値のある時間を提供する。

この姿勢があって初めて、高い料金には意味が生まれます。


高い技術には、高い価値がある

僕は、美容師という仕事を、もっと誇りある職業にしたいと思っています。

若い美容師が、将来に希望を持てる仕事。
家族を養い、自分の人生も楽しめる仕事。
お客様から尊敬され、社会からも正当に評価される仕事。

そのためには、美容師自身がまず、自分たちの技術の価値を下げないことが大切です。

安くすることで選ばれるのではなく、
価値を届けることで選ばれる。

そんなサロンでありたいと思っています。

僕たち美容師は、ただ髪を切っているのではありません。
その人の印象を変え、気持ちを変え、毎日を少し前向きにする仕事をしています。

札幌から、理美容業界の価値を少しずつ変えていく。
それが、僕のこれからの挑戦です。

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